癒しの旅―ピースフル・ウォリアー
体操選手として順風満帆な人生を歩んできた著者が、謎めいた老人との出会いをきっかけにして、「魂のレッスン」に目覚めていく過程をつづった自伝。アメリカで1984年に発表されて以来、世界で10数か国語に翻訳されているロングセラーであり、精神世界を題材にした書籍の中でも、その代表作といわれている1冊だ。なお、本書は、1987年に筑摩書房から出版された『やすらぎの戦士』を、タイトルを改めて復刊したものである。
1966年12月。カリフォルニア大学バークレー校に通うダンは、世界選手権でチャンピオンになるほどの優秀な体操選手だった。しかしそんな彼の心の内は、その幸福とは裏腹に、理由もなくふさぎこんでいた。ある夜、終夜営業のガソリンスタンドに立ち寄った彼は、そこで、背の高い白髪の男が、一瞬にして屋根に登る光景を目の当たりにする。驚くダンに、「おまえの役に立てるかもしれん」と告げる男。その夜を機に、奇妙な男「ソクラテス」とダンとの不思議な交流が始まった。
ソクラテスがダンに授けるのは、人生を幸福に生きるための智恵と、それを実践するためのトレーニング法である。人生訓をテーマにした書籍にありがちな説教臭さを感じさせないのは、禅などの東洋思想のエッセンスや、人生における気づきを、ふたりの会話の中に、ときにユーモアを交えながら巧みに織り混ぜているからである。実話に基づくストーリーとあるが、その読後感はきわめて小説に近い。なかでも、失意のうちに最後の旅へと出発したダンが、原生林の中でソクラテスと再会する場面は感動的だ。「ただただ、幸福であればいい」というダンの言葉にたどり着いた時、読み手は、自分にとっての大切な宝物を手にしているはずである。(中島正敏)
クリエーター:ダン ミルマン、Dan Millman、上野 圭一
